北海道のおみやげにはさまざまなものがありますが、多くの人が思い浮かべるものの一つに木彫りのくまが挙げられます。おみやげにもらったり、旅行の記念に自分で購入したり、他の人の家に飾ってあるのを見たりした人は多いことでしょう。このときくまが鮭をくわえている姿を思い浮かべる人が大半ですが、最初の姿はこのようなものではありませんでした。この木彫りは北海道の八雲という場所が発祥地だといわれています。
明治維新後、この地の19代当主が旅先のスイスで見つけた民芸品を持ち帰り、当時の貧しい農民たちの副業になればと推奨したのが始まりとされています。この木彫りのくまを最初に作成し、第一号としたのはある酪農家でした。やがて徳川農場という場所に農民美術研究会というものができて、一定のレベルを満たす作品には焼印がおされるようになり、商標登録したブランド品として販売されるようになりました。この徳川農場では山の中から野生の小ぐま2匹を捕獲して連れ帰り、木彫りのモデルにしていたといわれています。
よってこのころ八雲で作られていた木彫りは、今の鮭をくわえている姿より親しみのある作品が多かったようです。戦争が始まるとこのくまを制作する人が減り、ブランドとしての価値も失われていきました。しかし茂木という男が戦争中も作成を続け、このブランドを守り抜いていきました。鮭をくわえる今の姿になった木彫りのくまは、現在も北海道のみやげの一つのブランドとして多くの人に愛されています。